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✤ 三好達治の「雪」 [✤ 読書ノート]

 
三好達治の詩「雪」... かつて解釈議論がありましたが、

私は、雪深い里山の冬の情景を思い浮かべます。

春から秋にかけては、子供も総出で農作業がありますが、冬は、草木とともに人も、休眠の季節です。
雪は、山にも川にも、民家の藁ぶきの屋根にも静かに降り積もり、周囲の音を吸収して、更に静けさが増します。
夜、どこの家でも、昼間は家内で遊んだり勉強したりしていた子供たちが床に就き、静寂が更に深くなります。
雪は降り続け、里山を包み込んでいるようです。

しかしながら、同じ詩に「死」をイメージした方もいたと、記憶しています。白く冷たい雪が全て、生命の息吹を覆い隠してしまうから... だったと思います。
そうすると、屋内が急に冷え込んだ感じがします。寒さだけでなく、貧しさまで感じてしまいます。
詩が書かれた当時の、日本の農村部の貧しさ, 過酷さ,... 戦後生まれの私に想像ができなかったことを教えられたような気がしました。これを知る人にとっては、冬は「休眠」などという生易しいものではなく、「小さな死, 一時的な死」に近い厳しいものだったのでしょう。
そして、雪に阻まれて互いに行き来もままならず、子供たちは、春の訪れを待ち、それぞれの家で床に就きます。屋根に降り積もる雪は、まだ長い冬を思わせます。

三好達治は、大阪の商家出身で、陸軍士官学校を経て、親族の資金援助により東京帝国大学を卒業しました。
彼が、雪国の過酷, その農村部の貧しさをイメージしたかどうか... この「雪」は、町のものだったのかも知れませんね。そういう解釈もあったかと、思います。

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