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炎の人ゴッホ [日本語 - 翻訳書]

          
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 作品 : Lust for Life
 著者 : Irving Stone
 初版 : 1905(明治38)年1934年
 邦題 : 炎の人ゴッホ
 翻訳 : 新庄 哲夫
 初版 : 1990(平成2)年
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オランダ出身の画家 ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの生涯 (1853年3月30日~1890年7月29日) を綴った大作です。
作者のまえがき, あとがき を含め814ページ!ですが、堅い学術書ではなく「小説」ですから、読み易いです。

実在・事実を主題にした小説, 映画などの作品には、必ずフィクションの部分があります。
本書も、自筆の書簡・文書類から人物像を想像して、実際に起きた事件などと絡め、書き進められています。

全く評価されず、人間関係や貧困に苦しみ、精神を病み、孤独に絵を描き続けることに情熱を燃やした画家... 36年4ヶ月の人生... 略歴にすると、とことん ダメ人間 にしか見えません。
しかし、その人生を日常の日々の繋がりとして捉えると、また少し違う感覚があります。その点で、「小説」という手法が生かされています。

最初のつまづきは、学校生活です。15歳で 中退
翌年に親戚のコネで大手画商「グーピル商会」に入社しますが、7年弱で 解雇
23歳の ヴィンセントは、聖職者になりたいと願います。親族の反対で、いったんは書店に就職しつつも諦めきれず、結局は親族の協力で、資格を得るため、王立大学神学部を目指します。しかし、学業不振で 頓挫
次に、貧者・弱者を助ける伝道師になるための養成学校に行き、3ヶ月学び、仮免許を取得します。しかし、伝道先での自虐的な苦行が原因で 仮免許取消し
父親の援助で飢え死には免れるものの、再就職せず、家族から非難され、フランスを放浪し、画家になる決意... 27歳 (1880年) のことです。

画家としての活動は、僅か 9年 ほどですが、遺した作品は、油絵だけでも 860点!水彩画, 版画, 素描などを含めると 2000点以上にもなります。
但し、生前に売れた作品は、1点だけ...
まともに売れたのは1点も無いという説もあります。親族からの依頼や、その関係性で購入され、ゴミ同然に扱われていたり...

怒りながらも、息子を援助した父親が1885年に急死すると、それまで、父親ゆえに手を差し伸べていた 親族から絶縁 されてしまいます。金の無心を繰り返しつつ、自分勝手で傲慢な言動をとる ヴィンセント を最期まで助け続けたのは、2人の弟と3人の妹 (妹, 弟, 妹, 妹, 弟) のうち、すぐ下の弟 テオドルス (愛称:テオ) だけでした。

この人物の存在がなければ、
1885年以降のゴッホ作品はありませんでした。... ゴッホという画家の存在が無かったとも言えます。
私達が良く知る作品は、テオ援助時代のものです。

権威ある協会, 批評家, 資産家に否定されても、
親族, 周囲の人々から次々に絶縁されても、
自分が不甲斐なく情けなく、絶望的に思えても、
たった1人の理解者, 協力者がいれば
「19世紀西洋絵画の巨匠」の作品を生み出せる。

人の繋がりの意味や
人の一生の不思議を感じる本です。

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